吉田兄弟[弦奏]@やっぱりさすが!

11月3日、吉田兄弟「弦奏~津軽三味線とクラシックのマリアージュ」を聴きに中野サンプラザへ行ってきた。

「弦奏(げんそう)」は、津軽三味線と、バイオリン&ピアノによるコンサート。2011年からスタートし、今日の公演で27回目とのこと。

[弦奏]を聴きに行ったのは、2011年9月(松戸)、2011年10月(新宿)、2012年4月(横浜)。今回で4回目になる。その間、コンサート自体は20回以上も行われていたが、九州縦断公演や関西公演と、西日本での開催が中心。

しかも、九州縦断公演が始まる前、「弦奏のアンサンブルもバージョン2に深化した」と、編曲者の井上鑑さんは仰る......。そ、そんな~(泣)。じりじりと関東での公演を待ち続け、今宵ようやくバージョン2のアンサンブルを聴けることになった。


弦奏:げんそう
 津軽三味線 吉田兄弟(吉田良一郎、吉田健一)
 バイオリン 松本蘭
 ピアノ 近藤亜紀、林そよか
 編曲・音楽監督 井上鑑 [敬称略]

(マインドマップは後日アップします)


津軽三味線も、バイオリンもピアノも弦楽器に属している。ただし、音の出し方は異なっている。

  津軽三味線は、弦をはじく「撥弦楽器:はつげんがっき」
  バイオリンは、弦をこする「擦弦楽器:さつげんがっき」
  ピアノは、 弦をたたく「打弦楽器:だげんがっき」

「はつ+さつ+だ」の弦楽器を融合させてどのような新しい世界を奏でていくか、それが[弦奏]の醍醐味になっている。


コンサートは二部構成になっていて、第一部は吉田兄弟のオリジナル曲、 第二部はクラシックの楽曲を、それぞれ3種類の弦楽器で演奏する。

なるほど、第一部からすでに演奏曲目が変わっている。

吉田兄弟の音楽が大好きで、吉田兄弟の津軽三味線に馴染んでいるファンにとって、第一部の感じ方は大きく分かれてしまう。「お、この曲はしっくりくるね」という曲もある一方で、「この演奏はどうにも受け付けない」という曲もあるわけで......。
個人的に違和感をいだいたのは、今回もやっぱり『百花繚乱』と『Rising』だった。

『Rising』はバンドバージョンと編成が似ているのに、それでもかなりの違和感をいだいてしまう。
原因は、「女性性」にあると思う。

バンドバージョンは、鑑さんのエネルギッシュでダイナミックな演奏を中心に行われる。一方、弦奏では、女性三名によるクラシカルな演奏。たおやか過ぎてやわらか過ぎて、丸められて弱々しくなってしまっている。

『Rising』そのものが男性性の強い楽曲なので、もしクラシックなバージョンにするのなら、男性のピアニストとバイオリニスト、あるいは男性性の強い女性のピアニストとバイオリニストでなければ、『Rising』のもつ迫力に負けてしまう。
これは演奏テクニックの問題ではなく、演奏者本来のハートが原因なので。

男性性の強いピアニストとバイオリニストによる『Rising』を、聴いてみたくなった。

(うはは、ここで金子飛鳥さんの顔が浮かんでくるあたり......。飛鳥さんは女性性もしっかり持っていらっしゃる一方で、男性性も強い。どちらも持ち合わせているのは、飛鳥さんの生き様ゆえだと思う)


一方、今回の女性三名のクラシックな演奏とよくフィットしていたのは、『ありがとう』だった。

吉田良一郎さんが故郷の両親を想いながら創ったこの曲は、もともと女性性も持ち合わせている。そこへきて、津軽三味線の演奏にさらにピアノやバイオリンの流れが加わることで、より女性性が強まる。優しい雰囲気や、曲のイメージとよく合っている。

『ありがとう』の新しい形として、この演奏は心に残った。


第二部は、クラシックの楽曲を津軽三味線をまじえた3つの弦楽器で演奏する。

世の中には、壮絶な数の「クラシックの楽曲」がある。その膨大な楽曲の中から、津軽三味線にフィットする曲を選び出すのはとても大変だったようだ。

津軽三味線の特徴を最大限に引き出しつつ、クラシックの楽曲の個性も発揮できるような楽曲......。鑑さんと吉田兄弟がさんざん悩んで導き出した答えの1つが、「ドヴォルザーク」だった。

ということで、ドヴォルザーク組曲が演奏された。ドヴォルザークの複数の楽曲を組み立てて、1つの楽曲として演奏される。
確かに、ドヴォルザークの細かい音色の紡ぎ方は津軽三味線の奏法とも似ていて、すごく自然体。そこへさらに、津軽三味線を洋楽的に用いて、弦を指ではじいてギターのような奏法も。

今回も、この組曲にはさりげなく吉田兄弟の"あの曲"が組み込まれていた。この曲が組み込まれているのは、鑑さんの遊び心もあるけれど、別の意図もあることに今日は氣づいた。なるほど、すごく自然体にシームレスに移行するには、ここにこの楽曲が挿入されるのは必要不可欠に思えた。

こうやって、「どうしてここにこの音があるの?」「どうしてここにこのアンサンブルが入るの?」と考えつつ聴いていると、弦奏の楽曲は、とても緻密に綿密に編纂されていることがわかる。

改めて、井上鑑さんの編曲者としてのテクニックを感じてしまった。
[弦奏]は、クラシックの楽曲も吉田兄弟の楽曲をも知り尽くしていらっしゃる鑑さんだからこそ、鑑さんが編曲なさってくださったからこそ、この回数の公演を重ねることができたのだと改めて思った。

鑑さんの編曲は、やっぱり良い。なんだかくやしいけれど、本当に良い。


トリはもちろん、吉田兄弟お二人による『津軽じょんがら節』。

二人の合奏の後、健一さんのソロパート、良一郎さんのソロパート、そして最後に再び合奏に戻ってくる。

先日のラジオにて、「津軽じょんがら節は、兄弟対決である」と吉田兄弟は語っていらした。確かに『津軽じょんがら節』は、そのときどきによってお客さんの拍手や盛り上がり方が完全に異なっている。

今日のお客さんはとても乗りがよくて反応が素早くて、「おぉ!」「スゴイ!」とあちこちから感嘆の声が上がる。あちこちで拍手が沸き起こる。

私自身もどんどん前のめりになって、目を大きく見開いて、耳をダンボにして聴き入ってしまった。最高に興奮した。二人の迫力ある演奏に、満面の笑みになっている自分を感じる。吉田兄弟の『津軽じょんがら節』は、やっぱりさすがである。この曲を生演奏で聴きたくて、今日のコンサートに来た方々も多いことだろう。

今日の兄弟対決の結果は......。

それは、ここでは書かないでおく。
ただ、「吹っ切れる」ということが、こんなに如実に結果に表れるというのを目の当たりにした今日の演奏だった。


吉田兄弟、良一郎さん、健一さん。
蘭さん、亜紀さん、そよかさん。
さらに、聴きにいらしていた井上鑑さん。

納得&感動のひとときを、ありがとうございました!