Cafe Ostinato2 with吉田兄弟

1月31日。井上鑑氏Cafe Ostinato 2「打撃と叙情」へ行ってきました。

2017年10月に発表された鑑さんのニューアルバム『OSTINATO』や、編曲集『Seeing』『Believing』の楽曲を聴きながら、お話を伺うライブ&イベントです。
Vol.2の今回は、津軽三味線奏者の吉田兄弟さんとともに、音楽談義が繰り広げられました。

Cafe Ostinato Vol2


歌姫たちのお話

まずは、鑑さんによる音楽談義からスタート。
ピアノ演奏の後、『Seeing』に収録されている本田美奈子さん『 ニューシネマパラダイス』、吉田美奈子さん『STAY ~ トロイメライより』、諌山実生さん『とおりゃんせ』を聴きつつ、お話を伺いました。

Seeing-Believing.png


お三方とも素晴らしい声の持ち主です。音域が広く、音程もしっかり&伸びやか。そんな歌姫たちに、さらに心地よく歌っていただけるような味付けは、やっぱり鑑さんの編曲だからこそです。

転調に転調、さらに転調の続く『とおりゃんせ』。
とおりゃんせ遊びは、場面がどんどん移り変わっていくわけで、確かに転調に転調、さらに転調のイメージだなあと妙に納得してしまいました。

Cafe Ostinato Vol2


吉田兄弟、ご登場♪♪♪

後半は、吉田兄弟さんを交えての音楽談義です。
鑑さんと吉田兄弟の初仕事は2003年、吉田兄弟の4枚目アルバム『FRONTIER』でした。

良一郎さん26歳、健一さん24歳。若いお二人にとって、「鑑さんは『ルビーの指環』の人という認識しかなかった」と、申し訳なさそうなお顔の健一さん。

......いや、逆に、そこまでご存じなのがスゴイです。『ルビーの指環』のリリースは、1981年。
良一郎さん4歳、健一さんにいたってはまだ2歳なんですから。^^;

吉田兄弟


『FRONTIER』のアルバムにて、
鑑さんはタイトル曲『FRONTIER』の編曲とキーボードを担当しています。
作曲:吉田健一、補作曲:矢島公紀、編曲:井上鑑
津軽三味線:吉田兄弟
キーボード:井上鑑
パーカッション:三沢泉、CHRISTOPHER HARDY
ストリングス:金原千恵子ストリングス
ボイス:比山貴咏史 (敬称略)


僕も習いごとがしたい!

吉田兄弟が津軽三味線を始めたきっかけ。
それは、良一郎さんが5歳のときにさかのぼります。友達が習いごとをするのを知った良一郎さんは、「僕も習いごとがしたい!」とお父さんに訴えます。

お父さんの答えは、ただ一言。

「三味線!」

お父さんはもともと津軽三味線が大好きで、自分もプロになりたかったけれど......という経緯がありました。だから、良一郎さんのお願い、内心、「待ってました!」だったかもしれませんね。

素直な良一郎さんは、三味線がどういう楽器かも知らず、「はい、やります」。
ということで、三味線を習いにいくことになりました。

2歳違いの健一さんも、(お菓子目当てで)稽古場に一緒に通ううちに、三味線を習うようになっていきました。

三味線の稽古は、最初は短棹の細棹で、撥の「叩き」のみの練習をするそうです。良一郎さんが実際に叩きで演奏してくださいました。
1年ぐらいすると、今度は撥の「すくい」と、指の「はじき」と「うち」の練習になるそうです。今度は健一さんが演奏してくださいました。

[ああ、なんだ、そうだったのか]と個人的に納得。これだったら、できそうな感じがしてきます。

以前、良一郎さんの津軽三味線で体験演奏をさせていただいたことがあります。
初めて手にする津軽三味線。見た目以上にずっしりと重くて、指も腕もふらふら、重心が定まらず、危うく落としそうになりました。
見守っていた吉田兄弟スタッフ全員が「ぎょっ!」となって空氣が凍りつき......! 間一髪、ほっ......。

その瞬間、「津軽三味線は無理」と諦めたのですが、細棹から少しずつ積み重ねていくのならば、できなくはないのかも......。
津軽三味線の練習も、「やりたいこと」に加わりました☆


『津軽じょんがら節』とは

「津軽三味線の曲」といえば、やっぱり『津軽じょんがら節』でしょう。
吉田兄弟ライブでも、この曲を聴きたくて足を運ぶお客さんが多いです。

その『津軽じょんがら節』は、「こういうフレーズ、こういう奏法で『津軽じょんがら節』」だけが決まっていて、あとは奏者が自由に決められます。

六段から構成されていて、基本の一段から、二段、三段......と変形させていくそうで、一段を、良一郎さんが演奏してくださいました。
なるほど。一段は、よく知っているフレーズ、よく知っている奏法が詰まっています。

楽譜のない『津軽じょんがら節』。演奏は、奏者にゆだねられます。他の奏者が弾いたじょんがら節から好みの奏法やテクニックを見つけて、そこから自分の音色へと発展させて仕上げていきます。完全に作曲ですね。
だから、良一郎さんと健一さんの『津軽じょんがら節』は味わいがまったく異なりますし、それぞれの奏法も聴くたびに変化しています。

吉田兄弟の『津軽じょんがら節』は、二人の合奏、健一さんのソロ、良一郎さんのソロが組み合わせられていて、競い合いながら、吉田兄弟としての『津軽じょんがら節』の世界観を創り上げています。

ソロのパートは、兄弟対決です。お客さんの拍手によって、その日の勝負が決まります。日によって場所によって、お客さんの反応は完全に変化します。
どこが評価され、どこが盛り上がるか? ここも、吉田兄弟の『津軽じょんがら節』の醍醐味の一つです。
なので、何度でも足を運びたくなるのです(......^^;)。


吉田兄弟の曲作りの方法

曲作りの方法も、お二人はまったく異なります。
良一郎さんはメロディアスな曲が多く、健一さんはジャズやロックテイストの曲が多いです。
この差、若い頃のお二人の活躍の場が異なっていたことも影響しているようです。

北海道の風景とともに、タイトルや歌詞が先に見えてくる良一郎さん。
『ありがとう』も、歌詞から先にできた曲です。良一郎さんの津軽三味線と鑑さんのピアノで演奏されました。メロディアスで柔らかな優しさがあって愛情たっぷり詰まっていて、良ちゃんらしい楽曲です。
(同じく『FRONTIER』に収録されています)

一方、健一さんは......。
「津軽三味線は乗りにくい。なんとか乗りをよくしたい。サビを覚えてほしい、口ずさんでほしい」
ミュートさせてリズムをハッキリさせることを思いつきます。

ということで、吉田兄弟&鑑さんで『Panorama』を演奏。
ものすごくノリがよくて、吉田兄弟ライブでは、お客さん自らが手拍子を始める曲です。個人的に大好きな曲の一つです☆ 
『Panorama』は、ライブ翌日にもいきなり蘇ってきて、口ずさんでしまいます。
なるほど、健ちゃん、確かにおっしゃるとおり^^

吉田兄弟ベスト


「吉田兄弟の曲をいろいろ知りたい」あなたには、ベスト盤をおススメします。
『吉田兄弟ベスト壱』は1999~2004年の作品、『吉田兄弟ベスト弐』は2005~2009年の作品を収録。
・『FRONTIER』、『ありがとう』は[ベスト壱]
・『RISING』、『Panorama』、『鼓動』は[ベスト弐]に、
 それぞれ収録されています。


『KUBO 二本の弦の秘密』

さらに話は、『KUBO』へと続きます。

ライカのストップモーションアニメ『KUBO 二本の弦の秘密』。日本語吹き替え版の主題歌(ビートルズ『While My Guitar Gently Weeps』)を、吉田兄弟が演奏しています。
音楽監督&キーボード演奏は井上鑑さん。バイオリン金子飛鳥さん、ギター今剛さん、コーラス比山貴咏史さん&藤田真由美さんも加わって、パワフルな楽曲になっています。

吉田兄弟KUBO


KUBOは、試写会も含めて6回、観に行きましたが(笑)、とにかく面白い映画です。
ストーリーはすでにわかっているのに、毎回感動して涙するという......。感極まっているところへ聴こえてくる『While My Guitar Gently Weeps』。さらに、うわーっ!となってしまうわけで......笑。

1週間で3秒分の尺しか制作できないストップモーションアニメ。それも、三味線が題材になるなんて、吉田兄弟も大感激だったようです。

何かを始めるときは、きっかけになる「アンカリング」の存在が重要です。
現在の私のアンカリングは、このKUBOのテーマ曲『While My Guitar Gently Weeps』。この曲が始まると、「よし、仕事始めるぞ!」と、完全にスイッチが入ります。
特に、特徴的な「ダンダン」の部分は、こぶしを2度振るのにちょうどよい♪
ぜひ、お試しください☆


『連歌 鳥の歌』

『KUBO』の後は、必然的に『連歌 鳥の歌』へと続いていきます。

『連歌 鳥の歌』は、井上鑑さんが2012年に始めたプロジェクトです。
『鳥の歌』は、もともとはスペインの民謡で、チェリスト パブロ・カザルスが演奏会の最後に必ず演奏していた楽曲です。鑑さんのお父上、チェリストの井上頼豊先生も演奏会の最後に演奏なさっていて、『鳥の歌』は、鑑さんにとっても、大きな意味をもつ楽曲です。

『連歌 鳥の歌』は、この『鳥の歌』をさまざまな楽器で演奏してつないでいくプロジェクトで、吉田兄弟も参加しています。

『鳥の歌』を演奏するにあたって、鑑さんからは「『鼓動』の曲っぽいのがいいね」という提案もありましたが、健一さんは「特徴的に聴こえてくる音」をピックアップしながら音を創っていきました。
この曲は、『decollage ~吉田兄弟版・鳥の歌~』として発表され、いまでは、吉田兄弟ライブに欠かせない重要な楽曲です。

吉田兄弟HORIZONE


▲『decollage ~吉田兄弟版・鳥の歌~』は、アルバム『Horizon』に収録されています。

01. 風翔音 『Fusion』
02. regalia
03. decollage ~吉田兄弟版・鳥の歌~
04. HORIZON
05. 原郷 ~ゆきのおと~
06. nemure
07. Rite Of Harmony


『連歌 鳥の歌』のスペイン公演での演奏を、鑑さん&吉田兄弟はじめ、お客さんみんなで鑑賞しました。
『decolaage ~吉田兄弟版・鳥の歌~』をベースに、この日のために編曲された演奏です。

カタルーニャの人たちにとって、特別な想いのある『鳥の歌』。自由と平和を希求する象徴、『鳥の歌』。
その曲を演奏する日本人(吉田兄弟、鑑さん、飛鳥さん)。

演奏後のお客さんたちのスタンディングオベーションが印象的でした。

このライブは、現地でその場で聴きたかったです!(うー)


三味線である必然性、吉田兄弟である必然性

作曲をするときは、「津軽三味線である必然性、吉田兄弟である必然性」を必ず曲の中へ入れると、健一さん。

なるほど。すごくわかります。
『decollage』はもちろんですが、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の『Nabbed』も、NARUTOの『PRANA』も、パルクール映像のBGM『Cool Spiral』も、吉田兄弟だからこそ、津軽三味線だからこその楽曲たちです。

吉田兄弟、最高! 

なんとも月並みすぎる結論。でも、これに尽きるのです、はい。


伝えていく存在。そのためには魅力的でなければいけない

「伝えていく存在。そのためには魅力的でなければいけない」と、鑑さん。
大きくうなずく吉田兄弟。

本当に、この言葉もすごく同感です。
鑑さん&吉田兄弟には、ずっとずっと魅力的に輝き続け、魅力的な楽曲を伝え続けていただきたいです。

すくなくとも......。

俺さぁ、ライブ、たくさんやったのよぉ。疲れてんのよぉ。
ライブツアーでしょ、年末のカウントダウンでしょ、
それに▲▲ライブもやったし......、
もう、あれこれいろいろやったのよぉ。
ホント、疲れてんのよぉ。
そのたびにセトリ考えるの、面倒くさいんだよぉ。
もう全部、同じでいい? え、ダメ? 
ハイハイ、わかりましたよぉぉ、考えますよぉぉ・・・・。

などという、勝つ勝つ芸NO人には、ならないでいただきたいです。

ってまあ、鑑さん&吉田兄弟は、このような勝つ勝つ人には絶対にならないですし、まったく心配していませんけれどね(^^)。

閑話休題。


まさか!の『RISING』!

そして、締めの曲。吉田兄弟&鑑さんのお三方による『RISING』が演奏されました。
『RISING』は、バンドアンサンブルの楽曲です。アップテンポで変化も激しい。なので、バンドメンバーが揃わないと、なかなか生演奏されません。

それをお三方で演奏なさるとは......。手元が激しく動きまわることといったら! 

ひさしぶりに聴く生演奏の『RISING』。
複数の弦を同時に押さえた指が、そのまま棹を上下します。もう目が離せない。健ちゃんの指さばきを凝視。どんどん前のめりになっていく......笑。

鑑さんファンかつピアノを演奏する自分は、いつもは鑑さんのキーボードの指遣いを注視します。
でも、鑑さん&吉田兄弟の共演になると、視線は延々と健一さんの指さばきに注視してしまいます。これは、Criteriaライブで津軽三味線に衝撃を受けてハマってしまってから、ずっと同じ状態です。

レアな『RISING』、たっぷりたっぷり堪能させていただきました。
吉田兄弟、最高! ありがとう~☆


『和音』で癒されつつ外に出たら......

最後は、鑑さんお一人で、鑑さんのアルバム『OSTINATO』から『和音(Resonator)』。詞から、鑑さんの想いが伝わってきます。
和音は、調和の音。異なる音同士が重なり合って新たな響きを生み出します。Chordsではなく、Resonatorとするところに、鑑さんの深い想いを感じます。

ピアノの弾き語りをしっとり聴いて癒されつつ、今宵のライブイベントはお開きとなりました。

Cafe Ostinato Vol2


終わって外に出ると、そこには、真っ赤なお月様の姿!
赤銅色の輝きを放ちながら、静かに代官山の空を彩っていました。

なかなか観ることのできない貴重なスーパーブルーブラッドムーン。
この大切な日に、尊敬する2組によるライブイベントがあったことは、とても大きな意味があると感じています。

スイッチがONになりました。

まだまだお伺いしたいこと、たっぷり。津軽三味線の不思議、いっぱい。
ぜひ第2段をご検討くださいね。

鑑さん、良一郎さん&健一さん。
ありがとうございました☆


配信シングル、2018/2/7

『KUBO 二本の弦の秘密』日本語吹き替え版主題歌『While My Guitar Gently Weeps』と、ジェイソン・ポールによるパルクール映像BGM『Cool Spiral』の配信シングル、2/7にリリースされます☆